両親が相次いで亡くなり、土地建物は先に亡くなった親の名義のまま。
後に亡くなった親の相続税が無申告で、死亡から4年以上が経過してから申告の要否を検討する、
という場面を想定した一般的な解説です(数次相続・未分割)。
未分割のまま申告期限から3年(相続開始からおよそ3年10か月)を過ぎてしまうと、
小規模宅地等の特例は原則として使えなくなります。
3年経過後の分割に道を残す「承認申請」も、3年経過日から2か月という提出期限があり、
それを過ぎた後に取り戻す方法はありません。
ただし、土地建物が先に亡くなった親(一次相続)の名義のままの場合、
一次相続の遺産分割を「子が直接取得する」内容で確定させることで、
後に亡くなった親(二次相続)の遺産から土地建物が外れ、
二次相続の申告義務そのものが生じなくなる可能性があります。
特例の可否よりも先に、この分割の設計を検討する価値があります。
未分割の宅地には特例を適用できません(租税特別措置法69条の4第4項本文)。
救済の道は2つだけで、どちらにも厳格な期限があります。
| 救済の道 | 期限 | 本事例 |
|---|---|---|
| 申告期限から3年以内に分割する (分割見込書を添付して申告し、分割後4か月以内に更正の請求) | 相続開始からおよそ3年10か月 | 経過済みで不可 |
| やむを得ない事情についての税務署長の承認 (訴訟・調停等が続いている場合) | 3年経過日の翌日から2か月以内に申請 | 申請期限も経過。 争いがなく事情にも該当せず不可 |
遺産分割協議は口頭でも成立するため、判定は協議書の作成日ではなく合意が成立した日によります。
ただし「方向性の話が合っている」だけでは分割の成立とは評価されません。
協議書の日付を実際より前にして作ることは、仮装・隠蔽として重加算税(40%)や
課税できる期間の7年への延長に直結するため、絶対に行ってはいけません。
子は、先に亡くなった父の相続人本人であると同時に、
母が持っていた「父の遺産についての地位」の承継者でもあります。
そのため、いまから一次相続の遺産分割協議を行い、
「土地建物は父から子が直接取得する(母の取得はゼロ)」と定めることができます。
遺産分割には相続開始時にさかのぼる効力があるため(民法909条)、
母は父の遺産を取得しなかったことに確定し、
土地建物は母の遺産(二次相続の課税価格)に含まれないことになります。
数次相続でのこのような直接分割・直接登記は、実務上確立した取扱いです。
その結果、母の課税価格の合計額が基礎控除以下に収まれば、
二次相続の申告義務そのものが生じません(相続税法27条1項)。
「土地の評価誤りで申告義務が判明した」という前提自体が崩れる可能性があります。
二次相続を先に申告してしまうと、後から一次相続の分割が確定して課税財産が変わっても、
二次相続側の更正の請求は認められないとした裁判例があります(静岡地裁平成26年3月14日判決)。
必ず次の順序で進めます。
| 一次の死亡時期 | 課税関係 |
|---|---|
| 法定申告期限から5年超経過 (死亡からおよそ5年10か月超) | 課税できる期間(除斥期間)が満了しており、 子が直接取得しても一次側の課税は生じない(国税通則法70条1項)。 単なる無申告は「偽りその他不正の行為」(7年)には当たらない |
| それより新しい場合 | 一次の遺産総額が一次側の基礎控除を超えるときは、 一次相続の期限後申告が必要になる |
仮に分割時期の要件を満たせるうちに動けていた場合の確認です。
区分所有登記のない一棟の建物では、被相続人の居住フロアだけでなく、
親族が居住していた他のフロアの部分も特例の対象に含まれます(措置法施行令40条の2第4項)。
別フロアに住む子も「同居親族」として扱われます(同条13項2号)。
フロアごとの床面積按分が必要になるのは、区分所有登記がある場合です。
未分割のまま期限を過ぎると、この有利な取扱いごと使えなくなります。
早い段階での分割確定がいかに重要かを示す論点です。
この種の案件は、分割の設計次第で「申告不要」から「特例なしの重い課税」まで結論の幅が大きく、
一次・二次それぞれの事実確認(死亡日・遺産の全容・過去の合意の有無)が出発点になります。
放置すると税務署長の決定処分(この後は期限後申告自体ができません)や
延滞税の増加につながるため、方針決定を急ぐことをお勧めします。